SMAP×SMAP最終回によせて
1996年に放送が開始され、今年20年目を迎えているSMAP×SMAP。
SMAP5人の冠番組であり、現状5人が唯一集まる番組になっている。
スマスマの基本構成は割とシンプル。
ゲストを呼んで料理を出しておもてなしをする「BISTRO SMAP」
メンバーが参加するコントコーナー
メンバーの曲やゲスト・アーティストとのコラボをする「S-LIVE」
スマスマの20年は、SMAPが売れっ子アイドルになり始めてから国民的スターになるまでとほぼおなじだ。
スマスマを見ていれば、その頃のSMAPがどんな感じだったか、いやこの20年間日本がどんな風だったのかがよく分かる。
ビストロや歌コーナーには毎回旬なゲストから大御所、海外の大スターまで幅広く出演していた。
しかもビストロの場合旬なゲストとは芸能人とは限らない。
政界、スポーツ界,、普段バラエティに出ない人たち*1まで多くのゲストが来店し、SMAPとのトークを楽しみ、料理に舌鼓をうっていた。
最初は全く料理ができないメンバーばかりだったのが次第に腕を上げていき、舌の肥えた大御所までうならせる腕になるまでになったのは、20年という月日の重みだろう。
「男が料理をしても馬鹿にされない風潮ができたのはビストロのおかげ」なんて声も一部にはある、らしい。
コントコーナーは人気ドラマや映画のパロディから完全なる創作コント、金タライが落ちてくるようなコッテコテのものから非常にシュールなものまで、芸風もジャンルも様々だ。
スマスマのコントでパロディされたものはだいたいその年の流行のものだと考えておけばいい。
今年はあまりコントがなかったので「コップのツヨ子」くらいだったが、通常通りの放送ができていれば「シンゴ・ジラ」とか「スマの名は。」とか絶対にやってた。確実に演ってた。
コントコーナーの凝ったセットは、もう民放では殆ど見ることができない。
特に週イチでやってくれる番組なんて、どれだけ残っているだろう。
スマスマのコントコーナーはフジテレビのコントバラエティの遺風が残された数少ない番組だった。
数少ないコントバラエティを演っているのが芸人さんではなくアイドルのSMAPであるところがまた面白い。
スマスマは 芸歴30年近いベテランのコント芸が見られる番組でもあった。
ビストロで料理を作り、コントコーナーで顔を白く塗ったり水をかぶったり粉に全身突っ込んだりパイを投げつけられたりバンジージャンプしたりスカイダイビングしたりモノマネしてたらご本人が登場したり、おもしろい様子をいっぱい見せたあと、歌コーナー「S-LIVE」が始まる。
それまでふざけていた空気が一気に変わり、SMAPは歌衣装に身を包み、歌って踊る。
「自分たちは面白いコントもやるけど、こんなかっこいい姿も見せられる」。
そう全身で叫ぶようにSMAPは毎週毎週歌を披露し続けた。
また、歌番組がどんどん減っていった中で苦しんできたSMAPが、歌を披露できる自分の冠番組を持っているというのはとてつもない強みだ。
シングルを発表するたびにS-LIVEで披露されていた。
正直どの歌番組よりS-LIVEで披露されるSMAPの歌が最高にかっこよく私には見えた。
毎週SMAPを演出し取り続けているスタッフたちによるSMAPの歌披露。
SMAPはS-LIVEでアルバム曲まで披露してきた。
地上波の番組でアルバム曲を聞けるなんて、とてつもない贅沢な時間だ。
彼らの歌や踊りは決してうまくはない。
けれど、歌の世界を表現する力には目をみはるものがあったと思う。
それが活かされているのが、ゲストとのコラボステージだ。
近年だときゃりーぱみゅぱみゅや西野カナなどともコラボしていた*2。
アラフォーのおじさんたちが、だ。
SMAPたちの表現力もあるが、それを更に増幅させていたのはスマスマ音楽班のつくるセットだ。
週一回、長くても10分短いと5分以下のコーナーでも、アーティストの曲の世界観を表現するためにものすごい凝ったセットを作っていた。
レディーガガは、来日するたびにスマスマにゲストに来てくれていた常連さんになっていた。それは、料理も食べられてクオリティの高いライブもできるという点を評価してのことだろう。もちろん、SMAPたちとのトークも楽しみにしてくれていただろう(彼女はSMAP5人を全員見分けて認識してくれている)。
あらゆるジャンルのアーティストをゲストに呼び、地上波で流すという貴重な番組だった。
第一回目の歌ゲストが中森明菜だったあたり、かなりチャレンジャーだと思わざるをえない。
今日(日付変わってるから正確には昨日)、SMAP×SMAPは最終回を迎えると報道された。
番組の構成は二部構成だったように思う。
第1部はスマスマメモリーズファイルとして。1996年の番組開始から2015年までを当時の映像とSMAPの音楽で振り返るもの。
印象に残ったのは2011年の東日本大震災のときの特別生放送。
SMAPは1995年の阪神淡路大震災の時も被災者の方々に励ましのコメントを送り「がんばりましょう」を歌ったグループだった。
彼らはアイドルである。
彼らのファンであると言うと、大抵の人は「現実を見ていない」という目で私を見てきた。
けれど、2011年の東日本大震災、2016年の九州で起きた熊本大震災の募金のお願いのために、彼らは毎週頭を下げ続けていた。
毎週映像を取り直し、東日本大震災から5年経っても流し続けた。
熊本の時は発生してかなりすぐのスマスマで、東日本大震災の次に熊本への募金お願いも口にするようになった。
これらの大きな出来事のことを、SMAPは毎週毎週スマスマで思い出させてくれた。
普段の生活で忘れてしまう「まだ完全には復興していない日本」という現実を忘れないようにしていてくれたのは、「虚構」の存在と思われているアイドルだった。
思うに、彼らは確かにアイドルでありスターであり現実世界からかけ離れた存在である一方で、毎週テレビに欠かさず出て来る日常生活に溶け込んだ存在でもある。
その両面性を最大限に活かしたのが募金のお願いメッセージであり、SMAPの「ノブレス・オブリージュ」なのだと思う。
そして、スマスマで放送された5人旅。
普通に生姜焼きをシェアする中居さんと慎吾。
中居さんの運転中に普通に寝る下3人。
剛の運転に全員でツッコミを入れつつ笑っている様子。
ゲーセンで下3人がずっと遊ぶ一方中居と木村は交代で遊び、
卓球やホッケーゲーム、レースゲームなどでわりと本気で遊び尽くし、
5人でプリクラまでとってしまう。
そして最後のカラオケは中居正広の選ぶ「俺の好きなSMAPソング」。
自分で入れたベストフレンドで号泣してしまう中居と釣られてもらい泣きする剛、更に泣かせちゃおうとガチで歌い始める木村と慎吾、ガチ泣きしている中居をみまもっていた吾郎。
「私の知っているSMAP」ってこんな感じなんだよなぁ、としみじみ思った。
2014年の27時間テレビノンストップライブはスマスマではないが番組内で森且行の手紙が読まれてたことが採用の理由であろう。
1996年に放送された森且行最後の歌コーナーの映像からあの手紙までの18年、過去映像を出しても森くんの部分が合成で消されていた時代を経て、彼の手紙がSMAPの番組で朗読されるまでになった。スマスマは5人と森くんの歴史でもある。
森くん脱退、吾郎さん謹慎、剛謹慎といったSMAP内部での事件の当時の映像。
吾郎さんの映像は、当時の復帰放送のときのものをほぼそのまま使っていた。
「ピンチはチャンス」ではないが、不祥事を起こしても会見で記者たちの前に出て謝罪をし、謹慎し、復帰する時は直筆手紙をマスコミに送り、復帰回では改めて謝罪をして歌をうたう。
これがSMAPの責任のとり方だ。責任を取ったあとも、決してそのことを黒歴史にはせず、折に触れて反省の言葉を口にしていた。
そうだ。私の知っているSMAPは突発的危機に対する体制がかなりしっかりしているグループだった。
SMAPは決して逃げなかった。
しかし、この最終回には2016年12月26日現在のSMAPの姿はなかった。
アナウンサーがFAXを読み上げ、しきりに「このあと事前に撮影した5人最後の歌唱を放送します」と繰り返してた。
届いたFAXを見ると「解散しないで」「納得がいかない」等のメッセージも確認できたが、読み上げられたのは「今までありがとう」というものだけだった。
面白すぎる過去の映像の合間に挟まる「2016年12月26日のスマスマ」の異質さが際立っていた。
そして、スポーツ新聞等で散々に煽って流された「SMAPからのコメント」は直筆メッセージでも、録音された音声メッセージでも、5人、いや1人ずつの個別映像でもなかった。
ただ署名のところに「SMAP」とだけ書かれた、無味乾燥なものだった。
多分ここからこの5時間の番組の第2部が始まった。
オルゴール調のSMAPの曲が流れる中ひたすら過去のSMAPの写真が流された。
スマスマが始まったのは1996年でSMAPはデビュー5年目の頃なのに、この映像は1988年のSMAP結成から始まっていた。
さっき散々メモリーズファイルとしてやったものとかぶるものも多々あったが、スマスマに関係ない映像もあった。
これは、「スマスマの最終回」のための映像ではなく、「SMAPの最後」のための映像だとここで気づいた。
そしてそれが終わったあと、「5人で歌うのはラスト」「1曲だけ披露する」と煽りまくった「世界に一つだけの花」が始まった。
青赤桃黃緑の5色の花でつくられた「SMAP×SMAP」のロゴ。
真っ白いセットには色とりどりの花が設置されていた。
歌う5人。
中居さんは目が真っ赤、慎吾は途中明らかに泣くのをこらえていた。
他の3人も目が潤んでいたし、上を向いていた。
涙がこぼれないようにしているようだった。
最後、深い深いお辞儀をし、上から幕が下りてくる。
カメラが移動して、マグカップに入った5色の花(ガーベラ:花言葉は「希望」)が映る。
スタッフから拍手が贈られカットの声のあとまで放送されていた。
SMAPってこういう舞台裏の映像を見せるのを嫌がる人が多いんだが、流してよかったんだろうか。
後ろを向いて真っ赤にした目で天井を仰いだ中居正広が、記憶に刻まれた。
その後スタッフ一人ひとりと写真を撮るときは全員笑顔だった。
裏方のスタッフをとても大事にしてきた5人だから、スマスマのスタッフも彼らのために必死に盛り上げてくれていたのだと信じている。
最後、デビュー曲「Can't stop!!-LOVING-」がかかりスタッフロールで流れてきたのはスマスマ20年間の歴代スタッフの名前だった。
フジテレビバラエティ黄金期を支えてきた方々の名前が多数あった。
スマスマの歴史とはフジテレビバラエティの歴史でもあった。
そして最後はスマスマ初回で流れた6人の映像で終わった。
なんだろう。どうしてこんな感じになっちゃったんだろうか。
第一部までは確かに「スマスマの20年を振り返る」的な感じだったのに、途中で急に「SMAPの最後を送る会」みたいになっていた。
各マスコミはしきりに「スマスマを最後のステージにしたい」的な事務所を通じてSMAPが出したとされる手紙を取り上げていたし、たしかに第2部はそんな感じではあった。
けれど、第2部からはあんまりスマスマ感は感じられなかった。
多分、スマスマは感動的な演出がされても最終的には笑顔で終わる番組構成のことが多かったからだ。
吾郎さんのときも剛のときも、謝罪の言葉や歌う5人に散々泣かされても、最終的には中居さんが司会として話し始めると、最終的に笑顔で終われたからだ。
「改めまして、SMAPです!」
「それではまた来週お会いしましょう~!」
この言葉に、涙涙の雰囲気を茶化して笑わせて楽しい雰囲気に変えようとするSMAPを見慣れていたから、第二部のただただ感動させようとする感じに違和感があったんだと思う。どうもすっきりしない終わり方だった。
オルゴール流せばなんでも感動的になると思ったら大間違いだ。
結局、彼らは自分の言葉で解散の理由や経緯を話すことはなかったし、解散ライブもなかった。スマスマもこういう終わり方だった。
私はこれで良かったと思っている。
今までの会見や生放送のときのようにファンに向かって言葉を発していれば(あるいは今までと同じだと思えたならば)、私はは納得して彼らを送り出していたと思う。
けれど実際はそうはならなかった。
私は彼らがなぜ解散するのかよくわからないし、そもそも彼らがどういう思いで解散という結論にたどり着いたんかもわからない。
ここ1ヶ月位、「SMAPの気持ちを考えてやれ」という言葉が沢山ぶつけられてきているが、正直なところ私には彼らの気持ちがよくわからないのだ。
私は彼らに直接あったわけではないし、彼らも解散について現在の心境をわかりやすく率直に語ってくれているわけではない。
だから、今の彼らが何を感じ何を思いながら過ごしているのかなんて分かるはずがない。
むしろ、本当に確固たる根拠*3があって、彼らの気持ちを知っているというのならば、教えて欲しい。
ただ、私はこれまでのSMAPのやり方を知っているので、1月以降のSMAP周りの出来事に対して強い違和感を覚えていて、その違和感から彼らが自発的に解散を選んだという報道が信じられず、一体彼らに何があったのかという疑念が消えないのだ。
本当に、彼らに「自分で選ぶ」だけの選択肢が与えられていたのだろうか?
これが、私が彼らの解散に納得できない理由である*4。
8月以降この気持ちにどう落とし前をつけようか悩んでいたが、今日のスマスマの放送を見て決めた。
第1部の過去のSMAPの映像、突如挟まれたソフトバンクCM、世界に一つだけの花を歌うSMAP、そして最後に流れたスマスマ初回時の映像を見て決めた。
私は納得できないまま、SMAPを諦められないまま、来年を迎えようと思う。
あのソフトバンクのCMを見て、SMAPとソフトバンクのCMのクオリティの高さを見せつけられて圧倒されるのと同時に、東日本大震災復興支援財団の発起人としてSMAPと共に名を連ねているソフトバンクの心遣いにしびれた。
曲は「世界中が幸せになれ!」と歌う「オリジナルスマイル」。
そしてお父さんの「さよならじゃあ、ないよな」の一言。
散々最後のとかラスト1回とかそういう言葉にうんざりしていた私に響いた。
上の記事によると、契約はすでに切れているにも関わらず、ソフトバンクはあの1分のCMのために契約し直したそうだ。
そりゃあソフトバンクも商売だから、何かしらの効果を期待してCMを作ったのだろうが、それでもこれは粋だと言わざるをえない。
そして、最後に流れたスマスマ初回の映像。
あの映像の中に「終わり」とか「おしまい」とか「END」といったテロップは一切なかった。
「SMAPの最後」「スマスマの最終回」の中で、アレだけ感動的演出でお涙頂戴的な感じでキレイに終わらせようとしう空気があった中でこういうことやっているのがすごいと思ったんだ、私は。
私も「さよならじゃあ、ないよな」と思うことにした。
きっと、スマスマでまだまだいっぱいやりたいことがあったんだと思う。
シャッフルビストロの中居正広ゲスト回は結局放送されなかった。
スマラブ*5も木村と中居の分はやらなかった。
スマスマに呼びたいゲストはまだまだいただろう。
特に、私は森くんがオートレーサーとしてビストロに来店する日を心待ちにしていた。
そういういろんなことをすっぱり今日で諦めることは私には無理だ。
世界に一つだけの花を歌っている時、中居さんが指を1本→2本→3本→4本→5本と立てていき、ぎゅっと手を握り、また手を開いてひらひらと振った。
世界に一つだけの花は「ま た 花 か 」というくらい何度も歌番組で披露されてきたが、中居さんがこういう動きをするのは初めて見た。
これにはどういう意味が込められているのだろう?
増えていく指はSMAPの5人のことだろうと思う。
では手をひらひらと振るのはなんだろう?
それともいつもスマスマで言っていたような「また来週お会いしましょう」の意味なのか。
何もかもわからないことだらけだけど、コレだけは言える。
「SMAP×SMAP」は非常にクオリティの高い日本が誇るバラエティ番組であり、この番組が終了したことは非常に大きな損失だということだ。
スマスマのない月曜日はただただ憂鬱な日にしかならないなぁ、と思うと今から気が重い。